他でもない


 


 「あんな奴、嫌いだ」

天の助が真面目な声で言ったので、首領パッチは驚いて手を止めた。
田楽マンも顔を上げる。

「できれば、もう会いたくねーな」

あんなに仇む豆腐にも、こうまで冷たく言ったのは聞いたことがない。

そもそも、天の助がOVERを嫌っているなんて、初めて知った。

「何だよ、あいつ相手のときが一番ハジけてたくせに」

首領パッチが言うと、天の助は表情を険しくして、

「嫌いだから、あーでもしてないと、イライラしてしょうがねーんだよ」

電話を頭に載せたり、ワインを顔にぶちまけたり。

あの裏にそんなことがあるとは、思いもよらない。

「どこがそんなに嫌いなんだよ?」

「色々あるけどー・・・凄めばいいと思ってるとことか」

「あとは?」

「斬ればいいと思ってるところとか」

「他は?」

「負けた後のこととか、準備がいいとことか」

「・・・・・・」

「なんかさー、とにかく苦手なんだよ。手、組まないとヤバいときとかも、分別ねぇし」

そう言うと、また鋏を持って折り紙を切り始めた。

「・・・オレも嫌いだけど、別に、特別嫌いってことはないのらー」

「そうだよなー。オレもどうとも思わねぇけど。面白いし」

「ふーん」

天の助は切り抜きに成功した”ぬ”の文字を眺めつつ、興味なさそうに言った。


その様子を眺めながら、首領パッチは、まだ鋏を握れずにいた。


 ーーーこいつにも、苦手なヤツがいるんだなー・・・・・・豆腐以外に。


少し意外に思いながらふと思い出した。


 ーーーそういえば、OVER城から出たとき、スズに怒ってたっけな。
     ボーボボが、スズがOVER助けたのに気が付いて、
     OVERまで助けたのか・・・、なんて言った。
     でも、あれは多分・・・スズはいいやつだ、って、誉める意味だったはずだ。
     天の助の方は怒ってて、何でOVERまで助けるんだ、なんて、言ってた気がする。
     今思えば、それって、死ねばよかったのに、って・・・ことじゃねーか。
     死ねばよかったなんて、オレも思わなかったのに。珍しいな。


 ーーーやっぱ、ヘンなヤツ。


折り紙を切り続けている天の助を見て、思う。


 ーーーそれなのに、ちょっと安心したのは、何でだろ。

    こいつのペースに合わせてるのも楽しい。
    一人で遠慮がちだったこいつを、俺のペースに巻き込んで、変わっていくのを
    見るのも楽しかった。
 
    思ってることとか、口にしてるように見えて、実は隠してるのを知ってから。

    それを引きずり出して、表情変えてやるのだって、楽しかった。

    こうやって、あいつを引き出すのはオレだ。
    他の誰かじゃない。
 
    天の助を変えるのだってオレだ。
    ああいう、中途半端な野郎じゃねぇ。

    寂しそうだった目を開かせたのは、オレだ。
  
    あいつより子供のふりをして、こうして見てんのは、卑怯だろうか。
 

    でも、そこで純粋そうな顔で鋏を使う白い犬だって、オレと同類だ。
    やっぱりこれは罪じゃない。



首領パッチは胸裡で頷くと、鋏と折り紙を持って、二人と同じようにきり始めた。



 

 パッチてん基準、OVERてんの隊形に並べ!!
・・・という方向です。まどろっこすぃ。
 ひそかに犬が混じってますが、田楽は別に天の助を狙っているのではなく、
子供のフリして凄い観察眼を持ってる、ってことです。多分。
 
 
心底工作を楽しんでるのが、天の助だけだったらいい・・・

 


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