背丈と度量


 


 Aブロック副隊長、という、なかなか様になる肩書きを頂戴し、カツは、その基地に赴いた。

 建物は、遠くから見れば、Aブロック基地たるに相応しいものであったが、
近づいてみると、継ぎはぎやら、浮いた釘やら、手抜きが目立つ。

 中に通されてみれば、その手抜き加減はいっそう顕著で、床は歩くたびに、
カン、という安っぽい音を立てる。
 案内に出てきた隊員は、あまり強く床を踏まないように、という注意までした。
抜けたことも、一度や二度ではないらしい。

 そしてそれ以上に奇妙なのは、壁のいたるところに貼られた、得体の知れないポスターだ。
「ところてん促進!」などというキャッチフレーズと、ところてんの絵が描かれている。
 隊長が変人であることが、嫌でもわかる。

 他にも、廊下の隅に置かれている悪趣味なオブジェ、「ぬ」の曼荼羅なるものなど・・・
あまりにも謎が多い。
 気にするだけ損だ、と、カツはそれらを意識外に追いやった。


 やがて、「隊長の部屋」という表札のかかった部屋の前に通された。

「やっぱり、まず隊長に会う方がいいでしょう。きっと隊長が直接、細かいことは
説明してくれますよ。それに、ここに馴染むにはそれが一番手っ取り早い」

 隊員が言うので、カツは黙って頷くと、戸を手でたたいた。

「入っていいぞ〜」

 中から、直ぐに返事がある。
 そのまま戸に手をかけて、足を踏み入れた。

「失礼します」

ごく淡白な声で言い、戸を閉めた。
そこで部屋全体を見回してみる。

机に椅子に、変な柄のカーペットに、これまた変な柄のカーテン・・・・・・

と、大きな青い物体。


「よぉ、新しく来たっていう副隊長か〜?」

 見間違いだろうか。
 その声を発しているのが、その青い物体のように見えるのは。 

「あれ?違うの?」

今度は”それ”が、首らしき部分を傾げつつ問いかけてくる。
カツは、ハッと我に返った。

「い、いいえ。俺です・・・」

「やっぱりなー。オレの勘ってスゴい!」

その青い物体は満足気に言うと、カツの方にピョン、と跳ねて寄って来た。

「ふーん。でさ、名前何て言うの?」

 近くで見ると”それ”は、小さな子供くらいの背丈で、カツよりもずっと小さかった。
その関係上、やむを得ずといおうか、見下ろす形となる。

「・・・カツといいます」

「カツ?そっか。オレは、ところ 天の助。見ての通り、ところてんだ」

「ところてん・・・?」

「おう。何なら食ってみてもいいぜ?」

 確かに、あのポスターから、隊長がところてん好きの変人であろうことは予測していたが・・・
・・・”現物そのもの”でくるとは。さすがは毛狩り隊、と思わずにはいられない。
 その上、その”ところてん”は、自分を食えなどと言ってくる。
 冗談か本気か。
 カツは対処に困って、言葉を詰まらせた。

「・・・もしかして、ところてん嫌い?」

「・・・・・・いえ、嫌いじゃありませんが・・・」

「今はおなかいっぱい、とかか?」

「ええ、まぁ・・・」

ーーーいろんな意味で。

 言おうとしたが、言葉にならない。
 先が思いやられるとはこのことだ。

「あっそう。じゃあ、この基地の中、散歩してみねぇ?オレが案内してやるぜ?」

「・・・お願いします」

 隊員が言っていた通りの隊長の申し出に、カツは素直に頷いた。



 

 序章・・・かな。続きまする。
14巻までの事実しか存知居らぬ状況で書いてますんで、多分、
おかしいところがでてくるかと思いますが、大目にみてやって頂けるとありがたいです。

・・・にしても初書き・・・。難しいなぁ・・・。

 


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