水面 




 








サーッと涼やかな音を立てて流れる小川に、呂布はそのいかつい顔を映した。


   笑うだろうか。・・・夏侯惇は。


いつになく女々しい様子で、呂布は水面に指先を入れた。

波紋が広がり、呂布の顔を崩してゆく。


   笑うだろうな。夏侯惇も、太史慈のヤツも。


胸に宿りし恋心など、所詮この身に似つかわしくないのだ。

いくらあいつらがいいヤツらだとしても、きっと信じてはもらえないだろう。


この思いをどうにか吐き出したいが、相談する相手もいない。

赤兎にさえ笑われてしまう気がするのだ。

だから、仕方が無い。


呂布は、指先から水面の冷たさの中に自分の思いを吐き出した。


「夏侯・・・元譲、か」


口に出した瞬間、頬が上気した。


この腕に抱きしめた、あの時。

言ってしまえばよかったのだ。・・・好いている、と。

それなのに・・・。


「・・・あいつはいいヤツだ・・・。だが・・・」


やはり、言えない。

そんなものは一時の気の迷いだとか言って、笑いながらうやむやにしてしまうだろう。

あの時をおいてなかったのだ、自分の本気を伝えるには。

「俺としたことが、時期を見誤ったか・・・」

言ってみても詮無きことだ。



呂布の指は相変わらず、水と戯れる。

呂布は無意識のうちに水を梳く感触を、夏侯惇の髪と重ねていた。

見た目通りにさわり心地まで美しい、あの髪。

己の胸に収まるあの愛しさよ。


思えば思うだけ思慕が募り、吐き出すどころではなかった。







「太史慈、少し時間を寄越せ」

「は?」

呂布が突然やってきて、太史慈の腕を引っ張った。

「すぐ終わる」

「あ、ああ。わかった・・・」

一体何であろうかと引きつりながら、それでも律儀な太史慈は呂布について行く。



連れてこられたのは、あまり人気の無い裏庭である。



「・・・貴様は・・・夏侯惇をどう思う・・・」

「何?夏侯惇殿を・・・?」

緊張して損した・・・と太史慈は拍子抜けした。

「良い御仁だ。とてもな」

太史慈は心の底からそう思っていた。

「もっと具体的に言え」

「そうだな・・・面倒見がよくて、潔く、すっきりとした御仁だと思うが?
 武人としても優れておられるし」

「・・・あいつはよく好かれる男なのか?」

呂布は少し躊躇った後、聞いてきた。

「それはそうだろう。俺も尊敬できる御仁だと感じている。
 兵たちの中にも夏侯惇殿のことを敬愛している者はたくさんいるぞ。よく聞く話だ。
 ・・・それに、民にもよく人気があるし、他国の君主でも夏侯惇殿を将として欲して攻め来る者もいるし・・・」

「何?!」

呂布が血相を変えた。

「それは本当か?!」

「ああ、無論。この間も書状がいくつか届いていた」

太史慈が言い終わらぬ内に、呂布は駆け出していった。

自分の敵を、全て殺すために。













 




夏侯惇出てNEー!!!!!Σ('д';)
続く可能性が大です。

アンケートにて呂布惇をリクエストしてくださった貴方様にささげます!

 


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