水面 2
「おい、夏侯惇!」
「おう、呂布。どうかしたのか?」
大声に振り向いてみれば、ドスドスと床を踏みしめて歩いてくる呂布がいた。
「すぐに侵攻戦をしろ!」
「侵攻戦・・・?
いや、しかし・・・今は戦力も産物も回復しきれていないしな・・・。
もう少し待った方がよくはないか?」
「待ってなどいられるか!今すぐに行く。
俺と太史慈で出るから、お前は残っていろ。
その間にやりたいことがあるのならやればいい」
「・・・どうしてそんなに焦って戦をする必要がある・・・?
今はそこまで緊迫した状況でもないんだが」
「この俺が今すぐ戦をせねばならんと言っているのだ。
それ以外に理由なぞいらん!」
「うー・・・」
夏侯惇は困惑の表情で、呂布を見上げた。
「兵なぞ少量でかまわん。本陣が簡単に落ちん程度にいれば良い。
わかったな?」
呂布は恐ろしいほどの真顔で、夏侯惇を見下ろしていた。
「・・・しかし・・・呂布・・・」
眉間を押さえつつ、夏侯惇は言い募る。
「なんだ」
「もしも負けるようなことになったら、お前も太史慈も捕縛されてしまうかもしれないんだぞ・・・?
安易に侵攻戦を仕掛けては・・・」
そういわれて、呂布は一瞬考えてしまった。
兵力が侵攻戦をするのにはかなり不足しているのは事実であった。
それになにより、もしも自軍が負けてしまって自分も太史慈も捕縛されてしまったら・・・。
他国の君主の魔手から夏侯惇を守る者がいなくなってしまうではないか。
「・・・・・・・・負けん」
口を真一文字に結んで、呂布は決然と言った。
「太史慈。お前は残っていろ」
呂布は太史慈に言った。
太史慈は怪訝そうに首をかしげた。
「それではまず勝てんぞ。二人は将がいなくては」
「平気だ。俺一人で十分だ」
「・・・しかし侵攻戦だぞ?
防衛戦ならお前一人いれば勝てるだろうと思うが」
「・・・耳を貸せ」
呂布は少し腰をかがめると、太史慈の耳元でボソリと言った。
「俺は無論勝つつもりだが、万が一ということもある。
俺がもしも捕縛された時に、夏侯惇を守る者がいないでは困る」
「は・・・?」
早口につむがれた言葉に、太史慈はポカンとする。
呂布が夏侯惇に懐いているというのは感じていたが、ここまでとは・・・。
「わかったか?」
若干頬を染めながら、呂布は太史慈から離れた。
「わかった」
「それと・・・絶対に、絶対に夏侯惇には言うな!」
「・・・それも、わかった」
呂布は不機嫌そうに鼻を鳴らすと、背を向けて歩き出した。
「夏侯惇殿は・・・すごいな」
・・・あの呂布をあそこまで手懐けるとは。
太史慈は改めて君主の才能を見直して、深く頷いた。
続く可能性もないきにしもあらず・・・。
それにしても平均身長高いなー。
惇兄が一番ちっちゃいですね。
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