それからは、戦に集中した。

夏侯惇の周りを厳しく固めるように指示を出して、自らは常に戦に身を置いた。

いまや戦は呂布にとって、夏侯惇のために、己が為せる唯一でしかなかった。

夏侯惇との関係が、君主と将軍というものでしか有り得ぬのならば、それも受け入れるしかない。

ただ、夏侯惇のためにも、夏侯惇を守るためにも、己は、輝かしい将であり続けよう。

自分にとって、夏侯惇が愛しいものであることには、これからずっと変わりはないのだから。

そこまでを悟った呂布は、更に更に強くなった。





手当たり次第に敵国を撃退して、呂布は久々に凱帰した。

彼らしくあくまで堂々としていたので、それを見た太史慈と他の官人たちもほっと息を吐いた。

自邸に戻っても、夏侯惇が負傷するまえと同じような生活をはじめて、自分で自分を落ち着かせた。








それからしばらくして、夏侯惇が全快したらしいという話を聞いた。

やっと、外に出て、自由に歩きまわれるようになったという。

呂布はそれが、まるで自分のことのようにうれしくて、愛しい人の顔を見に行きたい衝動を、ぐっとこらえていた。












「呂布、いるか?」

更にそれから数日後のある日の、月が空に浮かび始める、夕方から夜にかけての時間だった。

外から、聞こえるはずのない声が聞こえてきた。

「呂布?」

赤兎の身体を撫ぜてやっていた呂布は、呆然として二回目の声を聞いた。

夏侯惇がわざわざ、こんなところに来るはずはない。

自分はあんなことを言ってしまったのだし、夏侯惇には避けられて当然なのだ。

・・・いや、ひょっとしたら、自分はもう不要なのだということを、伝えにやってきたのかもしれない。

そのときはそのときだ。

そう覚悟を定めながら、呂布は、大股で夏侯惇を出迎えに向かった。


「・・・どうした」

久々に見る夏侯惇は、血色もよく、いつものように明るい表情をしていた。

「最近、お前、ここに引き篭ってただろ?会いに行こうと思っていたのだが、なかなか抜けられなくてな」

なんら屈託なく話す夏侯惇に、呂布は倒れそうなほどの安堵を感じた。

無論、そんなものは表情には出さない。

片眉を上げて、ちょっと怪訝な顔をするだけだ。

「もしかして、また戦で怪我でもしたんじゃないだろうな・・・?」

夏侯惇の心配を鼻で笑って、呂布は、夏侯惇を中へと導き入れた。

が、庭まで入ったところで、夏侯惇の足が止まった。

「・・・どうかしたか」

呂布も立ち止まって、俯いている夏侯惇を見た。

「・・・・・・呂布・・・」

少しだけ視線を上げて、夏侯惇は呂布を見上げた。

真剣な目で、何かを決意したかのように、静に拳を握っている。

夏侯惇のその様子に、一体何を言われるのかと、呂布は慌てた。

「何だ?」

「・・・俺はな・・・」

ためらうように一呼吸置く。

「・・・俺は、お前の言ったことをよく考えた」

「・・・・・・」

ぴたり、と呂布の動きが止まった。

「お前の気持ちは、わかった。わかったんだが・・・」

呂布は、はっと息をのむ。

「俺には、自分のことの方が、よくわからなくなった。
 お前の言ってくれたこと、多分、俺は嬉しかったんだと思う・・・」

夏侯惇が呂布に向けている目は、珍しく、すがるようなものだった。

「でも、俺はどうしていいかわからないんだ。
 俺は、お前に何をしてやれる?」

庭の木が、夜風を受けてざわざわと騒いだ。

出始めた星の加減も、ほどよい夜だった。

そこに佇む夏侯惇は、やはり、呂布の目には愛らしい。

「最初は、忘れさせてしまうのが、一番お前のためになると思ったんだ。
 だが、お前は本気だっていうことも、そのときにわかってしまった」

呂布はずんずんと歩いて、夏侯惇の傍に寄った。

「・・・そこまでわかったのなら、良い」

ひざまずいて、夏侯惇の掌を捧げ持った。

「俺は、お前が考えているのを、いつまでも待つ。お前がわかるまで、待ってやる」
 だから、じっくり考えろ」

それから、呂布はそこに口付けを施した。
呂布らしくないやさしさで、あくまでそっと。

「・・・それまでは少なくとも、俺を、お前の将でいさせてくれ。お前のために、戦に出る。
 お前を守ってみせる。」
 
照れるでもなくそんなことをした呂布に、夏侯惇はどうしようもなく真っ赤になった。


夏侯惇が、やっとのことで頷いた。

呂布は初めて、笑ってしまった。





















 





いい人と5題:きらきら笑顔

段々、
軍担当→呂布
政担当→子義
マスコット→惇
ということになりつつあります・・・。ああ・・・、かわいそうな子義。

3エンパらしい空気も皆無だなぁ。私やっぱシリアスむいてないっすね。うはは。


早くくっついて!どうしようもないバカップル呂布惇が書きたいよ・・・!!(魂の叫び)


 


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