秀美





 
   





曹操は、夏侯惇の髪を愛していた。

肩から背までを流れるそれは、見た目には美しく、触れればさらさらとして、やわらかく曹操の指を受け入れた。

二人酒を楽しむときも、閨で身体を合わせる時も、曹操は、飽くことなく夏侯惇の髪を愛でる。



穏やかに微笑んでうっとりとしている曹操を見ると、夏侯惇にも笑みが移った。

自分で自分の髪を、良いと思ったことなどはないが、曹操が気に入っているのなら、それは良いものなのである。







敵将の刃が、髪を薙いだ。

攻撃を避け切らなかったことは、武人として悔しく・・・
曹操にとって大切であったらしいものを失ったことは、彼の情人として悲しかった。

その敵を剣の一振りで葬った後、ふと、そんなことを考えた。





後で、見苦しくないように長さを切りそろえてしまうと、先が、やっと肩に届くほどになっていた。

短くなった髪は、曹操のそれよりもずっと短くて、曹操に愛でられるに足るとは、とても思えない代物だった。

曹操の傍に行くのは、少し憂鬱だった。

悲しがるかもしれない。そう思ったからだった。




だが、それでも曹操は夏侯惇の髪を愛でた。何も変わらず、夏侯惇をも愛した。

やさしく髪をなぜた指は、かつては背までをするりといったが、今はゆっくりと、気持ちを注ぎ込むように愛するようになった。


もしかしたら、お前はこれを悲しがるかと思っていた。


夏侯惇が正直に話すと、曹操は目を細めた。


「わしが元譲の髪を愛でるのは、これが、元譲の髪だからだ。
美しい髪が敵将の手に散ったのは、確かに残念なことだが・・・。

短くとも、美しさは劣らぬよ。

そしてわしは、そなたの肌がその刃を受けなかったことが、何よりもうれしい。」


そんな風に言って、曹操は夏侯惇の肩の辺りに、顔を埋めた。


そうか。ありがとう、孟徳。


夏侯惇がにこりと笑って、曹操の頭をいだいた。


よかった。


すぐ近くに曹操の香りをかいで、全てを預けるように鎖骨に触れている鼻筋と頬骨を感じて、

夏侯惇は安心した。


夏侯惇の指が、曹操の髪を束ねた、飾り紐に触れた。

それは全く偶然だったが、夏侯惇は思いついて、紐を引いた。

ばらけた髪は、黒々として、滑らかに肩に落ちかかる。


「どうした、元譲?」


顔を上げて、曹操が見つめる。

その問いには答えずに、夏侯惇は髪をそっと掬い上げて、まるで曹操のそうするように、ふうわりと口付けた。


「誘っておるのかな、そのようにして」


・・・さあな。


夏侯惇の照れ隠しのような返事に、今度は、曹操の口付けが落ちた。




 



 
拍手文でした。
惇兄の髪型に対しては意外と寛容な殿だったらいいな。
惇がイヤじゃなければどんな髪型でもいいよ、みたいな。

そんでもって、めっちゃ殿の髪がきれいだといいなぁー!
きれいってほどじゃなくても、惇兄がすっごく殿の髪の毛を気に入ってるといいなー!
殿が髪ほどいたらありえないくらいセクスィーだと思うのです。殿だからなのです。

2010年1月28日追加

 




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