殺意
涙なんか枯れてしまえ。
斬ってやる。
絶対に貴様を斬ってやる!
冷静になれない自らを自覚することさえせずに、ただ、夏侯惇は走り続ける。
もう、止まる事はできない。
曹操の無い今。曹操の無い未来。
そんなものは、あってはならぬ。
無明、と笑う、あいつの顔。
この俺が、切り刻んでやる!
止まらない。止まれない。
膝が折れて、地にくずおれて、この喘ぎが終わるまで。
走らなければならない。
探さなければならない。
殺さなければならない。
殺したい。
確信的過ぎる殺意に、ただただ身を焦がす。
殺すことでしか、もう、終われない。
あいつを殺して、何が終わる?
そんな疑問を抱きもしない。
殺せば、何かが終わると、頑なに信じている。
あるいは、曹操がいない世を未だに生きていられる自らが、許せないだけか。
許せないのは、自分なのか、あいつなのか。
殺したいのは、自分なのか、あいつなのか。
殺したい。
殺したい!
そう叫ぶ夏侯惇の激情の裏に、ひっそりと冷たく宿る願いがある。
殺してくれ。
殺してくれ。
与えられる答えが死だというなら。
それは、早いほうがいい。
依然地を蹴り続ける足は、何者かの死に向かう体を、黙々と運ぶ。
無双OROCHIの惇兄。
樊城ではどうしてあんなに冷静にキれていたのか不思議でした。
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