蹌踉 2
信長は、思っていた以上にできる男だった。
ぐぬぬ、と曹操は唸りを発した。
確かに顔は、自分に似ていないことはない、と思う。
なんとなく、は。
気が似ているとも曹丕は言っていたが、それもまぁよしとしよう。
同じ、覇者の匂いというものがするのはわかるのだ。
自分からしてみると、相当異なったものではあるのだが、一応。
それでもやはり・・・なんというか、身長が。
身長が!!
「・・・お主、何ゆえそんなにでかいのだ」
信長の濃い睫に彩られた瞳を見上げながら、曹操は息を吐き出すように言った。
「クク・・・信長には、覇王がこれほども小さいのが意外、ぞ」
ポン、と頭に掌を置かれた。
「・・・これでも劉備よりは高いわ。
そのようなことよりも、次は遠呂智の根城を攻めるのであろう?
このわしが協力してやったのだ、負け戦をせぬようにな」
曹操は軽く腕を振り上げて、その掌を払った。
「言われるまでも無い。
この信長に負けは無縁、ぞ」
どうにも、つかみどころのない男だ。
笑みと共に語られる台詞は、いつでも飄々としている。
「・・・お主が遠呂智を倒した暁には、夏侯惇を伴って再び見えよう」
それを挨拶に別れようとすると、信長が曹操を止めた。
「ほう、・・・夏侯惇を伴ってか」
「ああ。おぬしの世話になったと言っておったからな・・・」
「ククク・・・そうか・・・」
意味深な笑いを気にしつつも、曹操は愛馬の手綱を強く引いた。
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